最後に演劇を見たのはいつだろう?
昨今、コロナ禍においてなかなか舞台を見る機会もなく
退屈な日々を過ごしている人も多いのではないだろうか。
今回はそんなあなたへ、良質な動画演劇コンテンツをご紹介したい。
しかしこれは、厳密に演劇とは呼ばないのかもしれない。
この舞台には演者が3人しかいない。
それなのに主演の役者には、台本はおろかストーリー・シチュエーションも一切知らされない。
予備知識一切ない状態で幕が上がり、全編エチュードで舞台を進行していかなければならないのだ。
息をもつかせぬアドリブ合戦。
テーブルトークRPGが原作の傑作舞台、カタシロRebuildを紹介しよう。
カタシロRebuildとは
カタシロRebuildとは、テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)のシナリオ『カタシロ』を原案とし、舞台向けに内容を再構築した演劇作品である。
主演に唯一与えられるのは「記憶喪失のマコトという役を演じる」という情報のみ。
たったそれだけの情報で、およそ1時間半にも及ぶ舞台を
終始アドリブ、エチュードで演じ続ける事となる。
目まぐるしく展開する怒涛の物語の中、
答えのない問いに、常に突き付けられる選択肢。
次第に失われていく、演技とシラフの境界線。
そして演者は運命に翻弄され、あたかもロールプレイングゲームの主人公のように、物語に飲み込まれていく。
カタシロRebuildの企画は、驚天動地クラブ主催のディズム氏が中心となり発起。
プロジェクトは現時点で全2回開催されている。
公演にあたっての資金はクラウドファンディングにて支援を募っており、第1回、第2回とも目標金額を大幅に超える支援を集めることに成功。
本公演は全編youtubeにて公開されており、
誰でも無料で楽しむことができる。
そもそもTRPGとは
TRPGとはテーブルトーク・ロールプレイング・ゲームの略。
対話を主軸とするテーブルゲームの一種である。
プレイヤーは架空の名前、人格、過去の遍歴や出自が付与されたキャラクターを担当する。
紙や鉛筆、サイコロ等を使い、担当するキャラクターになりきり、プレイヤーとゲームマスター間の対話によって物語を体感していく。
元祖は、1970年代のアメリカで大流行した「ダンジョンズ&ドラゴンズ」
そしてこのTRPGから、進行役であるゲームマスターの役割をコンピュータに委ねる形で現代におけるコンピュータRPGへと派生していく。
カタシロRebuildのココが凄い
舞台を彩る豪華出演陣
代永翼、呂布カルマ、島本和彦、名越康文、空気階段もぐら、白上フブキ、でびでび・でびる等、各界を代表する豪華出演陣が毎回登場。
演者それぞれ価値観が違えば、同じシナリオなのに展開が万華鏡のように大きく変化。人によっては感動巨編になり、人によってはシチュエーションコメディに変わる。
その為毎回展開が読めず、同じ設定ながら常に新鮮な気持ちで舞台を楽しめるのだ。
TRPGの世界観をそのまま落とし込んだ舞台セット
本物の病院からお借りしてきた器具の数々。
そしてクラウドファンディングで得た資金を用いて作り上げた舞台装置により、物語への高い没入感を楽しむことができる。
人間の倫理観に訴えかけてくるシナリオだからこそ、人と語りたくなる
演者によって展開も変われば、もちろん結末も大きく変わる。
答えのない問い、筋書きのないシナリオ、究極の選択を突き付けられ、主人公は苦悶し、悩みながら答えを見出していく。
同じ場面で自分ならどんな選択を選ぶか、きっと人に語りたくなる。そんな考えさせられるシナリオとなっている。
今からカタシロRebuildを楽しむならこの順序!オススメの回を厳選して紹介!!
カタシロRebuildはシーズン1,2含め、すべての回が動画一本で完結するので、どこから見始めても内容理解に問題はない。
しかし、公演はシーズン1で17回、シーズン2で16回も行われている。
すべてを視聴しようとすると、膨大な時間を要するだろう。
そこで、ここからは著者が特にお勧めする回をご紹介していく。迷ったらこの掲載順に視聴して頂くと、より楽しめることだろう。
シーズン1「カタシロRebuild」
J.B.
カタシロという舞台を知るのに最適な、チュートリアルのような回。
第4の壁の向こう側に語りかける奇怪な男が、ヒーローに憧れ、ヒーローになっていくお話。
コミカルな演技とシリアスな場面のバランスが良く、初演なのでネタバレコメントもほぼ無い。
途中途中挟まるメタ視点からのモノローグで現状把握もしやすい。
初回視聴に強くオススメできる一本。
マフィア梶田
ゲームライターという仕事柄TRPGに精通しているからか、
作り込まれたアウトローなキャラクターと徹底したロールプレイが楽しめる。
素人離れした演技と軽妙な口ぶりで、緊迫感あるやり取りが展開されるハードボイルド回。
電撃ネットワーク キュウゾウ
ここまで紹介した3本は出来れば連続でみてもらいたい。
普段のパフォーマンスからは想像できない程の繊細な優しさ。
前記二人と比べ、TRPGや演技に明るくないからこその、
「普通の人」が怪異に遭遇した時のリアルな反応が、見るものの感情を揺さぶる。
真相に触れた瞬間、彼の心の芯の部分がむき出しになる瞬間がすごい。
ぱんちゃん瑠奈
注目すべきは、他のどの公演とも全く違うアユム像。
でびでび・でびる演じるちょっと捻くれた子供の無邪気さが、演者、視聴者の心を抉る。
おそろしいあくまの悪魔的演技が光る回。
空気階段 もぐら
同じ舞台、同じあらすじなのに、役者が変わるとどうしてここまで喜劇に成り代わるのか。
カタシロという舞台の懐の深さが垣間見える公演。
まるでアドベンチャーゲームのおまけシナリオのような、圧倒的ギャグ回。
キングオブコント王者、ここにあり。
名越康文
注意
この公演だけは、他公演を少なくとも3つ位は見てから視聴してほしい。
本物の精神分析医がカタシロの世界に挑む。
2時間弱に及ぶ演技対決は、心理学から己を見つめ、人間の人間として生きる真理を知り、全てを救う最適解を導き出す。
シーズン1を締めくくるにふさわしい大長編。
シーズン2「カタシロRebuild 侵蝕」
最大の特徴は、前シーズンで主演だったキャストが医者役として仕掛け人側にまわり再出演している所。
カタシロがかつての演者に文字通り「浸食」し、物語は更に色彩豊かに展開の可能性を広げていく。
ハメコ。
頭の回転が速い主人公が、ゲーマーの目線でTRPGカタシロを攻略する。
進化した舞台セット、奥行きを増した世界。
現状を実況しながら探索してくれるので視聴者にも優しい、第二シーズン開幕に相応しい初演。
昨日の敵は…。
島本和彦
初のオンライン診察回。
POV映画のような視点が、オンライン演劇の新たなる可能性を予見させる。
漫画家としての信念と、唸る島本節。
生まれ着いての主人公的思考と熱血漢が、カタシロの世界を島本漫画に変える。
一人称だからこそ可能にした、主人公のモノローグが特徴的な公演。
祁答院慎
初の女医回。
父性と母性の違いが、カタシロの世界に新たな風を呼び込む。
母親の優しい狂気が、心優しいホラーゲーム作家の精神を追い詰める。
呂布カルマ
コーサカ氏演じるアユムと主人公の、
これまでの公演とは少し違う、フランクな絆の描かれ方が新鮮な回。
ラッパーならではの語彙力、頭の回転の速さが、物語に深みを与える。
すずきさん
本物の精神分析医が医者役へ。
前シーズン大活躍の名越先生が、今度は胡散臭い脳神経医役を怪演。
この回の本編は、ずばり日中の心理テスト。
時にはおどけ時にはとぼけ、本職の手による本物のカウンセリングが、TRPG名手の深層心理を丸裸にする。
相羽あいな
高いアドリブ力と天性の明るさが、強くなりたいと願うアユムに勇気を与える。
終盤、アユムの放つ一言が、見る者の心を突き刺す。
ユーモア・シリアスのバランス配分がよく、心地よい読了感を味わえる公演。
代永翼
物語終盤まで秘密にされるロールプレイ。
主人公の出自が最後まで謎のまま進行するので、視聴者も内容を推理しながら楽しめる回。
これまでで一番舞台演劇感が強い公演。真相に迫る時に巻き起こる迫力の演技バトルは必見。
完成度と演技力の高さに、これが本当に無料で提供されていいのか不安になるレベル。
彼は一体何者なのか?
終わりに
その他の公演もすべてめっちゃ面白いので
興味があったら是非視聴してみてほしい
主人公は全員で33名
あなたは、誰の決断からみるだろうか?
さぁ、話をしよう
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